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グランマ・モーゼス



「わたしの生涯というのは、一生懸命に働いた一日のようなものでした。」

アメリカの20世紀の代表的な素朴派(ナイーブアート)の画家、
通称グランマモーゼスことアンナ・マリー・ロバートソン・モーゼスは
自叙伝をこう締めくくっているそうです。

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アメリカの東北部、ヨーロッパからの移民がまず住み着いた、四季の美しい
ニューイングランド地方に暮らしたあこがれのおばあさんといえば、
昨年亡くなったターシャ・テューダーがいます。

もう一人の憧れ、グランマ・モーゼスは、1860年、(ターシャの暮らした)
バーモント州境にほど近いニューヨーク州の小さな農村に生まれました。







グランマ・モーゼスの展覧会は日本でも何度か催されたことがありますので、
ご覧になった方も多いと思いますが、グランマ・モーゼスの生涯を簡単に
ご紹介してみます。

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1860年、農家の10人兄弟の3番目の子どもとして生まれたグランマ・モーゼス
(モーゼスおばあさん)。
母は、学校の勉強より、当時の彼女の社会階層の娘がマスターしなければならない
仕事、つまり、農場で生活していく上での技術(縫い物、洗い物、石けん作り、
料理など)を重んじて育て、彼女は12歳の時から近所の農場に手伝いの仕事に
出て自活するようになります。

27歳(1887)で結婚してから後は、農家の主婦として忙しく過ごし、
10人の子どもを産み、(うち5人が成人)、育て上げ、
夫を亡くした後、70歳過ぎてから絵筆をとります。

それまでも、足りなくなった壁紙の代わりに、絵を描いたり、トレイやジャグに
絵付けをしたことはあったけれど、(フォークアート、いわゆるトールペインティング
ですね)実用を離れた絵を描くようになったのは、72歳の時に娘からすすめられて
始めた刺繍絵が75歳頃リューマチで難しくなってからのこと。

ほどなくして、絵に熱中するようになったモーゼスおばあさんは、描いた絵を
村の祭りに手作りのジャムなどと一緒に出品したり、知り合いの店に
置いてもらうようになります。

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何年も棚に飾られたままだった彼女の絵を見つけだしたのは、ニューヨークの
コレクターLouis Caldorで、78歳(1938年)の時のことでした。カルダーの
奔走で、彼とと同じく独学の画家の仕事に興味を持っていたオットー・カリール
Otto Kallierのセント・エティエンヌSt. Etiennneギャラリーで10月、
初の個展開催。


彼女の絵は、砂糖づくり、洗濯の日、窓から見た谷の眺め、クリスマス、
ハロウィーン、キルティング・ビー、嵐、虹、雪の日、チェッカーボード柄の家や
ホテル、自分が知り尽くした四季折々の昔ながらの農村の暮らしを、写生ではなく、
記憶をたどって鳥の目から見下ろしているようにかかれています。

70代半ば過ぎという画家としてのデビューは遅かったけれど、あたたかく、
穏やかで懐かしい作風と画家のひととなりは、短い間に彼女を
国民的な人気画家に押し上げ、マスメディアが急速に発達した時代にあって、
雑誌「タイム」の表紙を飾ったり、当時としては珍しいカラー放送でインタビューと
制作風景が放送されたり(1955)、100歳(1963年)の誕生日には
キャパの写真によるカバーストーリーが雑誌「ライフ」に掲載されたりもしました。

それでも、彼女は、マスコミの注目や、大統領から賞を贈られるなどの名声に
左右されることなく、農村での素朴な暮らしをそれまで通り続け、
画家として25年以上の活動と1600点に及ぶ作品を残して、
101歳の誕生日の数ヶ月後、1961年に亡くなりました。


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19世紀の小さな共同体と自然の中に暮らす人々の生活へのノスタルジーを越えて、
20世紀半ばのアメリカを引きつけた彼女の絵は、カーテン生地、お皿やカード、
ポスターなどにもなっています。

カーテン用の生地も、50,60年代にいくつものパターンが作られ、
とても人気のあるものです。

1枚目と2枚目の写真は「Deep Snow」(1961年)の絵ををバーククロス
(しぼのある当時カーテンなどインテリア用に使われた中厚手のコットン生地)に
プリントしたカーテン用の布の、当時のストアサンプル。
中に綿をつめて、絵のラインにそってキルティングしてあります。

3,4枚目は「 早春の農場 」(1945年)85歳の時の絵のもの。
キャス・キッドソンが、パターンを切り抜いて、子ども部屋のインテリアに
使ったりしています。

バーククロスは花柄を始め、風景、ミッドセンチュリー風、など様々なパターンが
あり、アメリカでは人気のある布で、花柄、風景などは、特に、クッションや
トートバックにリメイクされる方も多いです。

広岡ちはるさんなど、カルトナージュの作家の方もバーククロスを使用した作品は
見たことがあるのですが、グランマ・モーゼスのバーククロス、名前をあげて
日本で紹介されているのは、知っている範囲では、パッチワークを日本に初めに
広められた一人、松浦香苗さんくらいでしょうか?

布マニア好みの布で、一部では人気があるけれど、
日本では、一般的な知名度はそんなに高くないな〜思いながら、
もっと探したい布です。


グランマ・モーゼスを世に出したエテイエンヌギャラリーの現在の共同経営者、
ジェーン・カリアーによる、詳しい記事と沢山の絵(3ページ)が
先日のここにあります。
是非、ご覧下さいね。

by au_petit_bonheur | 2009-01-19 16:18 | 古い布

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