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レース・トリビア (2)

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          (image from Rijkmuseum via ) 


しばらく前、tumblrに、アムステルダムのライクス・ミュージアム(wiki)が所蔵している、この17世紀オランダの襞襟(wiki あ、wikiもこの画像だった)が回ってきたので、ちょっと面白くてご紹介。

これは世界で唯一現存している襞襟なのだそう。

襞襟というと、16世紀〜17世紀に流行した襟の形。犬や猫が傷口をなめたりしないように、首にはめる「エリザベスカラー」の語の元イメージ通り、通常エリザベス一世の肖像画や、16世紀日本にやってきたスペイン人やポルトガル人など南蛮人、キリシタン大名なんかの肖像にみられるようなレースや布で作ってパリッとのり付けされたものの印象だった。それに比べて、ふわふわと柔らかそうなこの襟。みたことないな。それで元の画像を探しにライクス・ミュージアムのサイトへ。

この襟のページを読むと、およそ以下の通り。





この襟は、その形から"millstone ruff" (直訳するとひき臼襞。マタイ伝には"a míllstone ròund a person's néck"という表現があるそうで、首にくくりつけられた碾臼のような重荷という意味もあるらしい p)と呼ばれる。スペインの支配層が着用したことから16世紀後半に流行した。

"millstone ruff"はプリーツを寄せた白いリネンで作られた丸い襟であり、オランダでは16世紀後期から1625年頃まで流行した。初期のものは小さく、だんだんに幅が広くなり、後には碾臼にも比較されるほどの大きさになった。このような大きな襞襟は主にフランドルやオランダの女性が作っていたが、こうした専門の職人にとっても、複雑で時間のかかる仕事だった。

このような襟を作るのには要した素材は膨大で、15メートルもの生地を使うものもあった。たいてい、目の細かい上質なキャンブリックの麻布が用いられ、ボビンレースで装飾されることも多かった。洗って糊付けした後、ギャザーやプリーツを寄せ、襟の上にセットして"pipe"アイロンを使って丸く形作られた。この高価な襟は、富裕層の男女が着用した。

初期の"millstone ruffs"は規則的にプリーツを畳んだものだったが、この襟はそうしたものと比較して、もっと不規則でやわらかな形状をしている。このやわらかなタイプは1615年から1635年頃、ファッショナブルな若者に人気のあった形である。

この襟は、特に薄手の(上手の)バティスト(またはキャンブリック)で作られている。キャンブリックという名前から、この素材はもともとフランドルの町Kamerijk (Cambrai)産のものだということが分かる。16世紀後期オラダに移住してきたフランドル地方からの避難民によってもたらされたものである。Haarlem の織物業者たちはこの生地を専門にしていた。」


**フランドル(フランス語 Flandre)英語式の読み方はフランダース

 15メートルもの布というところも興味深かったのだけど、先日のタンバー刺繍でも出てきた上質な薄い布、モスリン、キャンブリックとならんでよくcotton batisteというのが出てくるのだけど、ここではリネンではあるけど、ほぼキャンブリックと同じと考えていいと分かった。(本物のトリビアかしらん?素材イメージ。まあ、私的メモということで。)


余談ながら、この襟を着用した猫や少女の肖像写真も見つけた。Marie Cecile Thijsという写真家がこの襟をライクス・ミュージアムで撮影して(貴重なものなので着用不可ですよね)デジタル合成したものなんだそうだけど、この肖像写真がまた同博物館に収蔵されることになったそう。


ここ 右のインデックス写真をクリックすると大きく表示して見られます。



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by au_petit_bonheur | 2011-09-26 15:44 | レースノート

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