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フランスの刺繍のデッサン、レースの型紙など

今年の旅行中、V&Aのオピニオン・サービスに初めて行きました。

毎月第一火曜日の午後2時半から5時まで、自分の持っている古いものを持って行くと、専門家の意見が聞けるというサービスなのです。すごく大雑把な言い方をすると評価額の提示のない「なんでも鑑定団」みたいな感じでしょうか。


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予約不要。サービス当日博物館の受付でオピニオン・サービスに来た旨、そして何を持ってきたかを伝えると、どこに行けばいいか、担当の部署と場所を教えてくれる。時間まで担当の部署の前で待ち、時間になったら順番に部屋に通されて、また細かく相談内容を話すと、一番ふさわしいと思われるキュレーターに面会できるという手順なのです。

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(多分ニードルレース用の赤ずきんちゃんのパターン。リンクを付けるのはバツが悪いけど、こんな感じになるのだと想像)



Flickrにアップしました。 個々の写真のページ、左上のActionからView All Sizesで更に大きな画像で見ていただけます。





このサービス、上にリンクしたページにある紹介ビデオを見ると、敷居が高そうなのだけど、実際はそうでもない。宿泊先のご主人(筋金入りのビーチコーマー)はペルシャ湾岸のどこだかに旅行した時拾ったという、抱えるほどの大瓶いっぱいのblue & whiteの陶磁片を持って行って鑑定してもらったそうです。ペルシャ湾には昔交易の途中に沈んだ船から出た、日本、中国、東南アジア、そして逆側のヨーロッパからのものと様々な陶磁器の欠片が見つかるらしいのだけど、拾ったそれぞれがどこどういうものか教えてもらったのだとのこと。


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私が行った時に一緒に待っていた人たちは、80年代頃、インテリア用の古い布を一手に扱って一財産築いたというアンティーク屋さん、奥さんが布モノコレクターという仕立て屋さん、アンティークの帽子を専門にしている女性といった顔ぶれで、どの人も、たまたま見つけた自分の専門外の面白そうなものを、どういうものか教えてもらいに来ているそうで、このサービスをよく利用しているようでした。(早口なので、話の内容を全部フォローしきれていないけど)


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(以下テープレース用の図案)


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(裏打ちがしてあって使用済みのもの。このタイプは蝋引きの紙が多い)
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(襟のパターンと↓クローズアップ)

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私が持っていったのは、昨日の王冠の図案が入っている19世紀の刺繍図案集。片側が印刷で片側に手書きの図案があるというものです。フランスの刺繍デザイナーといえば、Ramziさんが集めている19世紀のSajou、Alexandre、Rouyerなどが有名どころですが、その他にも色んなデザイナーが存在していて、個人や刺繍専門家に利用されていたわけです。持っている図案のデザイナーについてと、刺繍の生産地や受注の流れなどについて参考書など教えてもらいたいと思ったのです。


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(モノグラムのパターン)

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(同じモノグラムの大小。テーブルクロスとナプキンなど刺繍するものの大きさに応じてサイズ違いで刺繍されることがあるからでしょうね)



ちょうど刺繍図案をテーマに論文を準備しているキュレーターがいるから是非話を聞くようにとのことだったのですが、色々連絡をとってもらったものの、その人はつかまらず会えずじまい。同じ部署の人に色々教えてもらい、ご本人とは帰ってメールで連絡という運びになりました。親身で丁寧な対応に感銘を受けました。スゴイ!


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(ジャボ?)

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写真は日曜日に持って行こうと思っている刺繍やレースの図案の一部です。これはすべて1930年代まで刺繍のアトリエを経営していたマダムの家から出たものだとのことでしたが、いわゆる刺繍だけでなく、ニードルレース、テープレース、フィレレースなどの図案も沢山入っているのです。


ニードルレースは布を下地としない刺繍で、テープレースはその応用、フィレレースはネットに刺繍したものということを考えると、どれも刺繍のバリエーションと言えるわけですが、同じ一つの工房が、様々なタイプの製品を扱うこともあったということが分かっておもしろい。


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(以下スリップの胸のところの刺繍。白色が点してあるところは何の印?)
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(こちらは水色)

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(カーボンコピー)

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(一枚の長い図案の中央で折ってカーボンコピー)

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(オリジナル)

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(左半分はカーボンコピー)


図案もどこかから買ったようなもの(裏側にスタンプなど)やオリジナルと思えるもの、実際のレースの青写真など様々。どのくらいの刺繍職人を抱えていたのか、それぞれのタイプで分業があったのか、教えてもらった本を読もうと思っているのだけど、なかなか入手しづらい。2冊だけは都内に所蔵している大学があったのだけど、読むのはいつになることやら。




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(フィレレースの図案。赤のところはシルク糸、その他は木綿糸など、糸の質感を変えるのではないかと想像)

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角が折れたり破れたりした古い紙が好きなので、そのままにしておきたかったけど、色んな折り目で不定形なので、少しだけアイロンをかけました。でもそれでも大きさが不揃いで、買って頂いた場合、折ろうか丸めようか、添えの厚紙を用意するにしてもどのくらい用意すればいいのか、まだまだ問題山積。

もっと大きな物もあるのだけど、どうやって見てもらえばいいかわからないので今回は見送りに。シンプルなボーダーだけのものなども、いずれコラージュパックのようなものを作りたい。これ、下にレースの断片などを挟み込むと、薄紙を透かして見えるのが結構かわいいです。いつか見て頂くまでに、教えてもらった本を一冊でも読んでおきたいです。


(額装もいいし、マットだけ切って、窓際にも。コラージュにも。こんな風にも使ってみたい)

by au_petit_bonheur | 2012-11-16 01:45 | パターン・素材・資料

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